揚げ物やお好み焼きなど家庭料理に欠かせない調味料、ソース。国内には100を超すソースメーカーがあり、風味を競っている。ソース通10人におすすめの製品をあげてもらった。
一口にソースといっても様々な種類がある。きっちり分けられるわけではないが、一般的に「ウスター」「中濃」「濃厚」の順番でとろみが強くなる。用途に応じて「お好み」「焼きそば」といった分類もある。
最も支持を集めたのは、大阪の池下商店が製造する「ヒシ梅タマリソース」。とろりと粘度の高いこげ茶色の濃厚ソースで「酸味と甘みが交互にきて、なかなかの複雑系」(熊谷さん)「温度を上げない方がうまみが際立つ」(西野さん)などの声があった。
池下商店は大阪市西成区のこぢんまりとした商業地域に建つ町工場。大正時代の創業で、タマリソースは戦後つくり始めた。名前はとろりとして濃厚な「たまりしょうゆ」から取ったが、中身は正真正銘のソース。社長の池下順三さんは「味を変えずにいることが、愛され続ける秘訣」と、商品名やラベルも含め昔のままのソースをつくり続けている。甘み、辛み、酸味のバランスが味の秘訣だという。
2位「どろソース」、4位「クライマックスどろソース ハバネロ・ライム」も濃厚タイプ。いずれも神戸のオリバーソースの製品だ。「濃厚さとピリ辛さが癖になる」(松永さん)というコメントの通り、口に含むと辛みが一気に広がる。ご飯と焼きそばを一緒にいためた「そばめし」の味付けに使われるという。
名前の「どろ」とは、ウスターソースの製造過程で出る沈殿物のことで、果物や野菜、香辛料などのソース原料の固形部分。これがおいしかったのが開発のきっかけだった。
これらの濃厚タイプに対し、3位に入った京都のオジカソース工業「復刻ラベルウスターソース」はその名の通り、さらさらとしたウスター。「うまみを感じさせる」(門上さん)「軽やかで香気あふれ、味のバランスがとてもいい」(じろまるいずみさん)と、完成度の高さから推された。
4位「敬七郎ソース」もウスター。神戸のメーカー、阪神ソースが創業者の名前にちなんで命名した。味は創業当時のレシピをベースにして再現している。
今回ランク入りした11製品のうち、これまで取り上げた5製品を含め、8つまでが西日本のメーカー製だった。お好み焼きなど粉ものとの相性がいいソース文化の広がりを物語る。
東日本勢の最上位は4位「特選素材ソース」。大正創業のトキハソース(東京都北区)の手により、最近のテレビ番組の企画から生まれた製品だ。「生野菜のみ使った本格派で優しい味わい」(喜屋武さん)。辛み、酸味よりうまみが勝り、濃厚な味がする。8、10位を生産するユニオンソースも東京の会社だ。
消費者の好みはここ数年、大きく変化している。ウスターと中濃ソースの生産量が減る一方、濃厚、お好み、焼きそばソースが伸びている。特に濃厚タイプが主役に躍り出ており、最新の統計では全体の3割を占め、以前主流だったウスターを逆転している。
「洋式醤油」の文化は今も
フランスなど欧米では多種多様なソースが調味料として使われているが、日本でソースというと褐色のウスターソース類を指す。
明治期に日本でウスターソースを模してソースが作られたときの主原料は醤油(しょうゆ)。「洋式醤油」などとして売り出された。そこからソースの中では少数派であるウスターソースを、調理の過程で使うのではなく、醤油のように料理にかけるという日本独自の文化が生まれた。
ソースの好みには地域差がある。東日本は中濃が一般的で、中京は濃い口、関西はトンカツやウスターの人気が高いなどといったデータがある。
早い時期から国産ソースが普及した関西を中心に、天ぷらにソースをかけるという「洋式醤油」的な使い方も残っている。(特別編集委員 野瀬泰申)
【調査方法】 通信販売や全国のスーパーなどで買えるソース(ウスター、中濃、濃厚、お好み、焼きそば)の中から、「他人におすすめできるもの」をソースに詳しい専門家ら10人にあげてもらい、集計した。選者は次の通り(敬称略、50音順)。
門上武司(月刊誌「あまから手帖」編集主幹)▽喜屋武みどり(ディー・エヌ・エーEC推進グループ)▽久保木鉄兵(楽天グルメ事業部)▽熊谷真菜(日本コナモン協会会長)▽坂部光(マツザワ)▽じろまるいずみ(居酒屋「JIROMAL」経営)▽西田健二(阪急百貨店グロッサリーバイヤー)▽西野嘉高(ニシノ酒店)▽花房美香(おとりよせネット)▽松永恵太(明治屋小売事業本部)(参照:日本経済新聞)
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