取引先や恩師ら大切な人を訪ねるときの手土産として、手堅い選択肢の一つが和菓子だ。主な百貨店で買えることを
条件に、持っていくと喜ばれるおすすめの和菓子を専門家に聞いた。
1位は虎屋「夜の梅」。練り羊羹の代表選手とも言える存在で、光沢のある黒褐色が風格と重量感を醸し出す。「老舗中の老舗の定番」(山本さん)、「何にするか迷ったとき、まず間違いがない」(原さん)などと、伝統に信頼を寄せる意見が多い。
重さは約1・5キロから50グラムの一口サイズまで四種類。黒砂糖味や抹茶味などとの詰め合わせもあり、選ぶ楽しみもある。半年程度日持ちするのも便利。
2位はすや「栗きんとん」。中山道の宿場町だった岐阜県中津川市の生菓子で、栗と砂糖を炊いて固めただけのシンプルな味だ。「誰が食べてもおいしいと感じる」(君島さん)と間口の広さを評価する声が多かった。毎年九月から翌年の二月までの限定販売。
3位は福砂屋「カステラ」。舶来の品とはいえ創業三百八十年余の歴史がある。「日本茶だけでなく、コーヒーや紅茶にも合う」(赤井さん)と最多九人の票を集めた。味の秘密は材料をかき混ぜる際の手作業にある。亀井さんは「高度な技術による味わいはこの店ならでは」と評価する。百貨店の売り場でも「お客さんの指名買いが多い」と上枝さんは言う。
4位は越乃雪本舗大和屋「越乃雪」。もち米の粉と和三盆糖を混ぜて押し固めた。入江さんは「最良の材料を使っているから舌の上に乗せるとほろほろ溶ける」と独特の舌触りを表現する。食欲不振だった長岡藩九代藩主、牧野忠精(ただきよ)が味に感動し菓名を与えた和菓子という。
人数が多い職場などで重宝するのが5位の坂角(ばんかく)総本舗「ゆかり」。素材の味が生きているエビせんべいだ。「塩味なので甘いものが苦手な相手にも重宝する」と君島さん。
6位の美濃忠「上がり羊羹」は寒天を使わずに蒸して固めた変わり種の羊羹。口に入れたときにほろりと溶ける食感が楽しい。毎年九月半ばから翌年五月下旬までの期間限定で販売する。消費期限がやや短いため、早めに食べきれる量にするなどの配慮が必要だ。
変わった材料をつかっているのが7位の小島屋「けし餅」。表面全体をケシの実が覆う。ケシのぷちっとした食感と甘みがいい」(門上さん)と独特の風味を賞賛する声が多かった。
8位のきんつば中田屋「きんつば」は大粒の大納言小豆の味をそのまま生かしている。「小豆の風味をこれだけ引き立てた技に脱帽する」と中尾さん。
9位は俵屋吉富「雲龍」。京都相国寺の龍の絵に感銘を受けた先々代が考案した。味だけでなく「龍の図柄がいかにも京都らしい」(赤井さん)と由来や見た目も評価された。
10位は但馬屋老舗(たじまやろうほ)「荒城の月」。この和菓子は江戸時代からあるが、昭和初期に滝廉太郎の曲名にちなんで商品名を変えたという。山本さんは「口に入れるとすーっと溶けていくような食感」と表現する。
手土産の和菓子は時や場所、目的に合わせて選ぶ必要がある。宮沢さんは「相手の人数が多いなら、食べやすいように小分けにしてあるものが便利」と話す。年齢や性別などにも配慮するといい。和菓子ならではの楽しみかたを提案するのは山本さんだ。「菓子の由来などの情報を少し仕入れておくだけで会話が弾む」。味だけでなく、見た目や来歴などいろいろな要素を考えて選ぶのもまた楽しい。
【調査方法】 和菓子に詳しい専門家14人に、消費期限など手土産にふさわしい条件を考慮したうえで1位から5位まで順位をつけて挙げてもらった。それをポイントに換算して集計した。選者は次の通り(敬称略、50音順)。
赤井達郎(奈良教育大名誉教授)▽入江織美(旅行作家)▽上枝淳子(阪急百貨店大阪・うめだ本店日本の銘菓撰担当)▽門上武司(「あまから手帖」編集主幹)▽君島佐和子(月刊誌「料理通信」編集長)▽小林治(菓子店プロデューサー)▽塚本章(松坂屋MD統括本部和菓子バイヤー)▽飛田毅(三越MD統括本部和菓子バイヤー)▽鳥越美希(料理研究家)▽中尾隆之(旅行作家)▽原亜樹子(情報サイト「オールアバウト」の和菓子ガイド)▽宮沢裕道(和菓子教室「和菓子のあとりえ」代表)▽山本諭(菓子ジャーナリスト)(参照:日本経済新聞)
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